原発こそ秘密ダメ  福島作業員ら秘密保護法案に危機感


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013113002000111.html?__from=mixi


 「原発に関わるあらゆることで、かん口令が強まるのではないか」。特定秘密保護法案が衆議院を通過したことを受け、東京電力福島第一原発で働く作業員らから懸念の声が上がっている。過酷な作業実態など、事故後、作業員の証言で明らかになった事実は少なくない。現場からは、「福島第一で起きている事実を伝えていく」という決意の声も聞こえてくる。 (片山夏子)

 

「誰が言ったか知らないが、作業の話は外で軽々しくするな」

 高線量下での長時間労働が報道された後のある日、朝礼で現場総監督が声を張り上げた。「お前らの会社だけでなく、上の会社にも迷惑が掛かる。福島第一で働けなくなるぞ」。大声の脅しが続く。実態を明かした作業員は、嵐が過ぎるのを待った。


 これまでも原発作業員には、原発で知り得たことを口外をしないというかん口令が敷かれてきた。誓約書を書かせる社もある。

 

秘密保護法が施行されれば、かん口令はより一層に厳しくなると作業員らは危機感を持つ。原発について秘密に指定されるのは、テロ対策にかかわる部分と政府は説明しているが「話してダメな範囲が分からないから、何も話せなくなる」とベテラン作業員はいう。

 

原発には、許可なく立ち入ることができない。その中で、作業員らの話で明らかになった現場の実態や問題点は少なくない。

 

汚染水を処理した水をためるタンクがボルト締めで溶接をしていないため、耐久性が劣ることが作業員の話で判明。被ばく線量が上限に達したり、コスト削減で待遇が悪化し、ベテランらが次々原発を離れ、人が集まらなくなっていることもわかった。高線量下の作業では、作業員が使い捨てになっている実態も明らかになった。

 

福島第一や第二に長年関わってきた技術者で地元企業会長の名嘉(なか)幸照さん(72)は「現場から安全性への疑問や問題点を告発できる体制がない限り、原発の安全は保たれない」と話す。原発での事故やトラブルを現場の人間が口にするのはタブーとされてきたツケが、福島第一原発事故につながったという悔いがある。「法が成立すれば隠蔽(いんぺい)体質の後押しになる」

 福島第一で長年働く作業員は「原発の問題は命に関わる。法律があろうとなかろうと、今、原発で何が起きていて、何が問題かを伝えていかなくては」と話している。